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「獲とれましたか」
「チブスじゃないです。医者は何とか言っていたですが、まあ看病疲れですな。」
もう一度小学校の校庭まで辿り着いた時には、衣裳がくたくたになつたのと疲労し切つたのとで、行列をつくつて歩いている間に自然と現れていた共通の類似、あの正面を切つたまじめさが消え失せ、代りに日頃のそれぞれな持前が、尖つた顎だの鹿爪らしい顔つきだのいふものが今や歴然と姿を現した。まだ解散にならぬ前から気早やに冠をかなぐり取つた者もいたし、衣裳をぬぎにかゝつた者さへあつた。
むかしからおれとこの人とは仲よしだつた――それは押しかくすことのできない悦ばしさだつた。
房一は苦が笑ひをした。
「別に惜しいほどのことではありませんよ」つづけて、ふいに調子を変へると、
「ほう、ほんに!みんなある」
「さつき着いたばかりの新聞で見たんだがね、――堀内将軍がいよいよ凱旋されるさうだ」
並んで立つと、いきなり
と、云ひかけたまゝ、相沢の黒味の多い眼はぢつと房一の顔をのぞきこみ、云ひかけたものがその中で煙つているやうな表情をした。
「どうもこれぢや――」
「坑には入つてみたんかね。あすこはもう何年も入つた人がないちふことだが」
「袴はそこですよ。足袋を先きにはくのよ」