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「訴訟があるさうで、面倒なことですな」
「いゝえ、なんの。おれんとこへなんか。――あんたは忙しい身だもの」
「ホリウチ?」
「あの人は来まいて」
「一体どうしたというのだ。」
看護婦がそつと上つて来た。
「さうぢや」
来客の間にほつと寛くつろいだ空気が流れ、直造が袴をさばいて立ち上らうとした時だつた。
道平が口をうごかせるまでには随分手まどつた。
と、房一はほつとした面持になつて云つた。
と、房一はそれまで彼のわきにおとなしく坐りこんでいた犬に声をかけた。川を渡る間中、落ちつかない様子で、普通に地面に坐るのとはちがふ感じにぺつたり船底に腰をつけて時々中空に鼻を上げて、何かの匂を嗅いでいた犬は、房一が自転車を持ち上げるのと同時に、足の下からさつと河原にとび降りて、そこら中を駆けまはつた。
「いや」