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「それあ、あんた」
「ね、君」
「あれらしいのよ」
練吉は一人で感心し、それでも足りないと見えて、房一に呼びかけた。
うまい工合だと感じた房一はすかさず云つた。
「をかしな男だな」
「まだつて、はじまつたばかりですよ」
茶器を持つてこちらへ近づきながら、盛子自身も何となく眩しいやうな目つきをしていた。それは彼女に溢れている若さだつた。その声で想像させたやうな細身ではなく、むしろ中肉だつたが、背が高いので一種の優しみが現れていた。
ざつと四十人近い客数であつた。その半ばあたりへ来ると、直造は一々前まで行くのを止めて、ふりかへつては「山下さん、お次へどうぞ」と云ふ風に名を呼びはじめた。だが、房一の所へはなかなか来なかつた。大部分の客が席に居並んだ頃になつて、房一は漸く自分を呼ぶ直造の稍しやがれた声を聞いた。
遠くの方で誰かが呼んでいた。
「さうです。農林学校の先生だとかをしていられると聞きましたが」
と、房一はほつとした面持になつて云つた。